【07】ラベンダーを運ぶ

母の育てていた植物は3つ。
ベランダに置かれた身長ほど高さのあるミモザと、膝の高さくらいのラベンダー、そして室内にある大きなパキラ。

起き上がるのが辛くなってきた母の世話と慣れない家事で余裕がなかった父は、ラベンダーの水やりをついにあきらめてしまった。

萎れたラベンダー

根元はまだ生きている。枯らす覚悟で育ててみることにした。

手で運べるくらいに短く切り詰めて、土と一緒にビニール袋に詰める。母もそばで見ていた。
電車とバスで1時間半、私の自宅へ運び、小さな鉢に植え替えた。

植え替え後のラベンダー

数日後、小さな芽がいくつもふき出した。ラベンダーは強かった。なんとか根付いたのだ。

母から届いたメッセージには育て方が書かれていた。
高原のような環境で育てよ。真夏の都内では難しい注文だったが、ラベンダーはなんとか耐えた。台風の日は風呂場へ取り込んだ。

母よりのメッセージ

根腐れしそうになったり、萎れそうになったり、雪に埋もれたり。いくつものピンチを乗り越え、ラベンダーは今もベランダで風に吹かれている。

自然の中で育つ植物を人間の都合で連れてきて、小さく仕立ててベランダで育てるのだから、うまく環境に馴染まなくても仕方がない。
でも、来年も花が咲いたら、とてもうれしいだろうな。

残りの2鉢、ミモザとパキラは、心の余裕を取り戻した父によるこまめな水やりで、なんとか現状を保っている。そろそろ母のメモに従って剪定をしなくてはいけない頃だ。

しばらくの間は、植物が枯れないように実家に様子見に行くことにしよう。やかんにいっぱいの水をミモザにやって、父と鍋でも食べようか。

2019/05追記:3年後の植物たち

今年もラベンダーは花を咲かせそうだ。冬には枯れてしまったように見えるが、春に切り戻すと小さな芽がいくつもふき出す。

ミモザは、カイガラムシが付いたり、酷暑や厳冬で水やりが不十分だったりして、今年は花が咲かなかった。強めに剪定した後に小さな芽が出たので来シーズンに期待。

パキラは快調。大きな葉をつける。そろそろ父が剪定する時期だ。

2019/07追記

夏の酷暑でミモザが枯れてしまった。父もよくがんばった。母も許してくれるだろう。

2021/05/23追記:5年後のラベンダー

ラベンダーは実家に持ち込み、父に水やりを任せている。無事に越冬し、2鉢に増えた。

花が咲くとハチがやってくる。網戸を閉めるのを忘れないようにしなくては。

パキラは冬にあっけなく枯れてしまった。大きくなりすぎて水やりの勘が狂ったようだ。代わりに持ち込んだモンステラと「若パキラ」が大きく育っている。

ラベンダーの鉢

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