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ユザワヤのカード

母の病状は日ごとに変化し、緊迫した状況が続いていた。

病室に通い続ける父の体力も限界に近く、サポートにも気が抜けなかった。カレンダーを作ったり、葬儀の準備をしたり、することが意外にあって慌ただしく、悲しいという気持ちが麻痺していた。

その頃、新宿のユザワヤでセールが始まっていた。
閉店するということで、ミシンから文具まで、通常値引きされないようなものまで安くなっていた。
洋裁の道具、パッチワークやトールペイントの資材、きれいなレースやボタン。母が喜びそうなものばかりだ。
新宿のホテルに泊まってもらい、一緒にあれこれ買い物して、荷物を宅配便で送って。

うっかりそんな様子を想像してしまい、胸がいっぱいになった。

私は自分の気持ちを言葉にするのが苦手だ。特に母にはふざけたことばかり言っていた。

病室の母は言葉を発することができなくなっていた。目を薄く開いて黙っているばかりの母にユザワヤのことを話すと、涙が止まらなくなった。他にもいろいろな話をしたように思うけど、覚えているのはこのことくらいだ。

とにかく、どうしようもなく無念だったのだ。
結果的に、母が生きているうちに本音で話をすることができたのだけれど。


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