【08】くだらない話が楽しい

父と母がスマートフォンを持つと、妹がメッセージのグループを設定してくれた。iPhoneのメッセージの機能がシンプルだったこともあり、2人は思いがけなくすぐに慣れた。

交わされるメッセージは些細なこと。
朝のあいさつ、食べたもの、動物の画像、変なニュース、仕事が終わった知らせ、おやすみのあいさつ。

母の体調が悪くなるにつれて、何を送ったらいいのか迷うようになった。
「おかげんいかが?」のメッセージの返事にはいつも泣いたネコの絵文字。答えさせることがつらくなってきた。

それでも食べ物の写真は引き続き送った。母がもう食べられないのはわかっていたけど、私がしっかり食べて元気でいることを知ってほしかったから。

外に出られない母のために、散歩の途中で花を見かけては写真を撮って送った。
動物の写真も体調を気にせず送れるいい題材だったのでよく送った。

ムクゲの花
サルスベリの花

どんなことなら母に送れるか手探り状態だったころ、私と妹の他愛もないやりとりに、母が言った。

「楽しいね」

くだらない話をしよう。
なるべくいつもどおりの。
母の日常が少しでも保たれるように。
私が楽しく暮らしていることを少しでも伝えられるように。

そして私と妹のネタ合戦が始まった。

メッセージ
母から届いたメッセージ。このころ母は薬の副作用で妙な夢を見ることが多かった。

日々のやりとりは、父にとっても悲しい気持ちが和むものとなっていたようだ。

母の体調が悪くなって再び入院してからも、シリアスな状況をなるべく笑えるように表現してメッセージを送った。母はもうスマートフォンを使うことができなくなっていたけれど、父のためにメッセージを送った。
父もまた、病室の母の様子をメッセージで知らせてくれた。

母がいなくなったグループでは、今もくだらないネタ合戦が続いている。


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