母の葬儀の日は11月には珍しくかなりの雪が降った。山は白く色づき、交通にも影響が出た。
タクシーで家族葬の小さな会場へ向かう。道路にも雪がうっすらと積もっている。運転手さんは以前に病院に向かう母を乗せたことがあったそうだ。
段取りしたことは概ね予定どおりに進み、ほっとした。スライドやBGMもイメージ通り。仕事のように淡々と進行に気を配っていた。
会場にバッグを忘れたのは、自分で感じていた以上に気持ちがざわついていたからだろうけど…。
「体は魂の入れ物だから早く返さないと」父にそっと呟いた。
雪は夕方まで降り続いた。
母はきっと、入院が長くなったことが気に食わなかったんだろうな。それで雪を降らせて抗議しているんだろうな、とぼんやり考えていた。
ひと息つこう。
手続きのことは少し眠ってからにしよう。
心に浮かんだのは、悲しさよりもそんな気持ちだった。