色と暮らす 色に親しむ

若い頃はベーシックな色が好きだった。
白、黒、ベージュ、グレー、クリアー、ときどきネイビーとカーキ。
着るものも、持つものも、まず選ぶのは無難な色。

今は明るくてビビッドな色が好きだ。服や小物に積極的に取り入れている。
年を重ねて、鮮やかな色の組み合わせに怯まない度胸がついた。

きっかけは母だった。
私がインナーに黒を着ていたのが気に食わなかったようだ。
ガチャピン色とムック色(しましま)のヒートテックを送ってきたのだ。

「家の中でくらい明るい色を着なさい」

言われるとおりにしてみたら、思いがけなく気分が良かった。
ルームウェアやインナーから色を意識して身につけるようになっていった。


生活に色を取り入れることは「スキル」や「教養」に近いものだと思う。

ピアノが弾けるように、育った環境で子どもの頃から自然に色に親しんできた人もいるだろう。
もちろん「生まれながらのセンス」も大きい。

それだけではなく、色使いの「スキル」は経験と慣れで身に付き、後天的に「感性」も育つのではないか。
続けているうちに、色の勢いに心と顔が追い付いてくる。


「好きな色」や「似合う色」は変わっていく。
季節や気温、光線、環境、その時の気持ちにシンクロして、心が求める色も変わる。

真夏に暑苦しく感じて涼しげなブルーを着たり、
真冬に寒々しく感じて温かみのあるオレンジを着たり。

父と母がシンガポールで暮らしていた頃、徐々に服の色が鮮やかになっていった。
無意識のうちに、外因的な要素が「好きな色」を変えることもあるのだ。

「いま心が求める色」が「私に似合う色」。


色はそれぞれエネルギーを持っている。
気持ちにフィットする色が日々の暮らしに足らないと、だんだん心もくすんでいくように感じる。

家の中や自宅の周りで着るものは、カラフルな色やポップな柄の服だ。
オフの時間は明るく自由な気持ちでありたい。

色のエネルギーを浴びて心も弾ける。


年々、ビビッドでクリアーな色を好むようになってきた。
衰えゆく肌のハリや髪の艶を色で補おうとしているのか?

グレイヘアに強い色の服。悪くないな。
色の力を借りて、迫力あるおばあさんになろう。

一方で、ベーシックな色のニュアンスの繊細な違いにも惹かれる。
群青のクールさ、真っ白の威厳。わずかな違いで印象が変わる。
ベージュとグレーは階調が多すぎて、マスターするにはまだまだ経験が必要だ。

カラフルで派手な色ばかりが「いい色」なのではない。
控え目な色も力と意味を持っている。

穏やかでリラックスできる室内環境を作ってくれるのは、それらの色の重なり合いだ。


鍛えることで、色が「見えてくる」。

もっと色を生活に。
いまの自分に似合う色を、いま身につけよう。

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