【09】サービスしない母のサービス

さっぱりしていて、はっきりしていて。
不要なことは不要、嫌なことは嫌と言う母だった。

実家との行き来が楽になるよう、ペーパードライバー講習を受けようと考えていることを話すと
「あなたがそうしたいならそうしなさい。実家のためにするのであればしなくていい。」

買ってきた乾電池の余りを実家に置いていこうとすると
「そんなに使わないからいらない。」

体調が悪くなるにつれ、一緒にいる父への当たりが強くなった。声をかけるタイミングが悪いなど、父にも怒られる理由は十分あったのだろうけれど、

(もうちょっとサービスしてあげて!)

最後の入院をした頃、母はもう一度帰宅をするか迷っていた。
「アイスの1本でも食べているところをお父さんに見せられれば。」

病室についても
「個室がいい。明るくて気持ちのいい部屋にいるところを見せたい。」

母は、父にできる精一杯のサービスをしていたのだ。

点滴で栄養を摂るようになってから、母は3か月も頑張った。これは毎日顔を見にくる父へのサービス。
それでも体調の悪い日は「さわらないで」「ちょっと黙ってて」と怒られていたけれど(父はどうも間が悪い)。

ドライな母だが、私が手芸の道具と材料を受け継ぐことと、一人になった父のそばにしばらくいること、それは断らなかった。心からそうしてほしいと思ってくれたのだろう。


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