【02】はじめてのスマートフォン

病気がわかってまず必要だったのは、父と母に携帯を持ってもらうことだった。

両親はこれまで携帯を使ったことがなかった。好奇心の強い母がスマートフォンに興味を持っていたので、まず1台、いわゆる「かんたんスマホ」を契約することを考えた。

母が懸念していたのは、高齢の父の手が震えてタッチパネルで入力できないことだった。私のiPhoneで試したら父の指にも反応したので、スマートフォンでも大丈夫だろうということになった。

下取りに出しそびれていた使っていないiPhoneが自宅にあることを思い出した。ローンも終わっているし、バッテリーもしばらくは保つ。これを契約して使えれば安い維持費でいろいろと楽しめるだろう。父と母の了承も得た。

後のメンテナンスのことを考え、私の2台目の端末として契約した。
ドコモショップで勧められたのはパケットを分け合うプランだ。その後、使い始めてみると、父と母はほとんどの時間をWi-Fi環境のある実家で過ごしていたので、このプランで十分だった。

ケースはネコの柄、母の好きな赤い色を選んだ。

父と母はシンプルなメッセージにすぐに慣れた。
母がもう1台契約したいと言い出した。しかし、その端末は短い期間で解約することになるだろう。私は躊躇した。

そこで、私の同居人の古いiPhoneを使わせてもらうことになった。契約せず、Wi-Fi専用機として使うのだ。
父と母が別々の場所に外出することはほとんどない。母が入院することになった場合、病室の母にドコモで契約したiPhoneを持っていてもらい、ほとんど自宅にいる父はWi-Fi専用機を使えばいい。

家族4人がメッセージでつながったことは、便利であると同時に、皆の心の支えになった。母は「ねこめくり」を楽しみ、時々は調べ物にも使っていたようだ。

父の入力についての問題は、タッチペンを使うことで解決した。時々入力モードがおかしくなり、外国語のような謎の言語が送られてきて皆で解読することになったけれど・・・。

離れて暮らす母の姉、つまり私の伯母は、母と直接会うことができなかったが、LINEの動画で会話することができた。

ソフトウェアアップデートには手助けが必要だが、私か妹が実家に行った時に更新すればなんとかなりそうだ。

最後の入院の時、母が動けなくなると、病室に置いた母のiPhoneを使って父が母の様子を知らせてくれた。
父が持ち帰ってもよかったのだが、何かがどうにかうまくいき、母がもう一度メッセージを見られるようになる気がして、なんとなく引き上げられなかったのではないだろうか。

今でも父は、家族からのメッセージを楽しみにしていて、読んで笑っている。

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