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前回に引き続き、今回は圧力鍋のレビュー。
少し長くなりますが、お付き合いください。
もくじ
プロが認めたロングセラー商品
圧力鍋を選ぼうとすると、検討する要素がいろいろあり、その奥深さに唸る。
価格、サイズ、構造、材質、製造方法、安全への配慮、メンテナンスのしやすさ、アフターサービス。
全ての条件が揃った製品はない。どの要素を優先して選択していくか。
私の圧力鍋はたまたま母より受け継いだものだったが、考え方や生活スタイルに合ったすばらしい製品だった。
実家の鍋はコープ(CO-OP)ブランドのもので、製造者は北陸アルミニウム(ホクア)だ。
90年代に製造されたものだが、なんと今でもほぼ同形で「hokua」ブランドの商品が販売されている。
「hokua」ブランドに馴染みはあっても、この製品をご存知の方は少ないかもしれない。
この製品は一般の家庭向けのほか「プロユース」の商品としても販売されている。
ホクアは業務用の圧力鍋の分野でも長い歴史と実績を持っている。
タフさと機能性は使ってみるとわかる。プロに支持される理由はここにあるのだろう。
アルミキャストのトップメーカー 北陸アルミニウム株式会社
ものづくりの町、富山県高岡市で昭和5年に創立され、約90年の歴史がある。
アルミキャスト(鋳造)日用品の生産で日本トップクラスの企業だ。
圧力鍋の製造は昭和28年から。
鍋などのハウスウェア製品のほか、ビル用建材や工業用品などの製造販売も手掛けている。
皆さんがご存知なのはフライパンだろうか。
こちらも名作。私は自宅と実家で3サイズ愛用中!
価格:実売ではミドルクラス
4.5Lの定価(税抜)は20,000円(実売価格はリンクでご確認ください)。
材質や機能の違いにより、各社の圧力鍋の価格帯は約4,000円~50,000円と幅がある。
実売価格ではリブロンはミドルクラスに位置する製品だといえるだろう。
サイズ:3~4人分なら4.5L
私の使っているのは4.5Lのサイズ。
4人分の煮込み料理にちょうどいい。8合のごはんが炊ける。
圧力鍋は満量では調理できない。加圧のために空間が必要だからだ。
鍋の大きさに対し調理できる量は一般的な食材で満量の2/3まで。意外と少ないので注意が必要だ。
アルミ製とはいえ、4.5Lで2240gの重さがある。
中身が入るといよいよ重い。
しっかりした補助取っ手がついているので両手で運ぶようにしている。
圧力排出の構造:加圧の様子が音でわかるオモリ式
この商品はオモリ式を採用している。
オモリ式は蒸気の出るノズルを金属製のオモリで塞ぐ構造だ。
圧力がかかると蒸気でオモリが揺れて音が鳴る。
一方、他社製品でみられるスプリング式は、蒸気口にバネ(スプリング)を入れて、そのバネの力で圧力を調整する。蒸気がほとんど出ず、音がなく静か。
慣れるまではオモリが揺れて蒸気の出るシューシューという音が怖かったが、圧力のかかり方がよくわかるので、オモリ式を選んで正解だった。
音で圧力の様子が分かるので、音に合わせて火加減の微調整ができるし、鍋から目を離して材料を切ったり洗い物をしたり、他の作業ができる。
圧力切替:高温・低温の2段階
圧力は2段階。黒と赤のおもりで切り替える。
黒は高温用で一般料理向き、赤は低温用でごはんの炊飯(玄米以外)向きだ。
(私が持っているのは高温用のオモリのみ)
大気圧より1気圧高い圧力と、普通の鍋(約98℃)に比べて高温の120℃で調理する。
(高温調理で0.1MPa(1.0kg/cm2G))
一部メーカーの「超高圧」製品より圧力は低いが、調理に十分な圧力で、いわしの骨も柔らかくなる。
素材・製造方法:熱伝導に優れたアルミキャスト《鋳造》製
熱伝導に優れたアルミキャスト《鋳造》製
北陸アルミニウム リブロン圧力鍋カタログ
国内で一つ一つ手作りで製造されるホクアの圧力鍋シリーズ。アルミキャスト製《鋳造》で熱保有力に優れた「特厚底」。熱ムラのない全面均一加熱でおいしく調理します。(日本製)
「鋳造(ちゅうぞう)」とは、溶かした金属を型に流し入れ、冷やして固める製造方法。
できた製品を「鋳物(いもの)」とも呼ぶ。ストウブやバーミキュラなどのホーローの鋳物をイメージするとわかりやすいかもしれない。この製品はアルミ製なのでホーローに比べると軽い。
アルミキャスト製
北陸アルミニウム リブロン圧力鍋カタログ
(AC7A:アルミ、マグネシウム合金)
鋳造製品は、溶解状態のアルミが金型へ鋳造され自然硬化する過程で独特な結晶組織を形成します。 表面側は、熱伝導に優れた固くて緻密な結晶。ゆっくり冷やされる内部は、熱をたっぷり蓄える熱保有力に優れた粗い結晶を特徴としています。 ですから、おいしいお料理作りに必要な加熱ムラのない、全面均一加熱の働きを作り出します。
ただのアルミの鍋ではない。
製品の表面と内部でそれぞれ性質の異なる結晶組織ができる。
アルミの特性である熱伝導の良さと、アルミの弱点である冷めやすさを補う熱保有力の両方をあわせ持つ。
「鋳造」はシンプルに思えるが、調理に適した高い機能性を実現できる製造方法だ。
アルミは熱の伝導性が高いので、圧力がかかるまでの時間が短い。
また、内部の粗い結晶組織と、鍋のしっかりした厚みにより、十分な蓄熱性がある。
安全機能:安心の「5重設計」
これでもかというほどの安全性を重視した設計。
構造がシンプルなことで、かえって信頼できる。
圧力調整装置
ノズルから出る高温・高圧の蒸気をオモリで一定の圧力に保ち、スムーズに排出。
安全装置
何らかの理由でノズルから蒸気の排出がスムーズに出なくなり、規定の圧力を超えた状態になった時、自動的に安全装置が作動して蒸気を排出。
強制排出機構
万一、上記2つの装置が作動せず異常に圧力が上昇する状態になった場合、蓋の裏に装着したパッキングが自動的に外れて、蒸気が排出される。
安全機構〔調理前〕
正しく操作しないと、密閉状態にならず圧力がかからない設計。
4.5Lの場合、安全確認開閉レバーを引きながら取っ手が正しく重なるまで蓋を回してセットすると、カチンと音がしてしっかりロックされる。
安全機構〔調理後〕
圧力が残っている間は感圧装置の圧力ピンが上がった状態になり、蓋を開けることができない設計。
安全基準
この製品は2つの安全基準をクリアしている。
PSCマーク:販売するために必要な国の安全基準
SGマーク:一般財団法人製品安全協会の安全基準(安全保険加入商品)
手入れ・メンテナンス
シンプルな構造のため、ほとんどのパーツをはずして洗浄できる。
特に煮込み料理を作った時は、油やアク、肉や魚のにおいが鍋からなかなか取れないので、洗うのが楽で助かっている。
ノズル詰まりなどのチェックも簡単で、安心感がある。
アフターサービス
保証書付き。
一つ一つの鍋にロット番号の刻印がある。番号を伝えてパーツの取り寄せが可能(有償)。
(リブロンのパーツは製造打ち切り後最低10年間在庫を保有)
パッキングは使用頻度によるが目安として約2年で交換が必要。
通販サイトには「30年以上使っている」というレビューも。
取っ手やオモリの取り寄せも可能で、これほど鍋本体がしっかりしていると相当長く使えるのではないだろうか。
オリジナルレシピ
圧力鍋の圧力や熱の伝わり方、冷め方はメーカーによって異なる。
そのため、インターネットや本のレシピにある時間は参考程度の情報で、自分の持つ鍋に合わせて加減しないといけない。
より正確な加圧時間を知るため、オリジナルのレシピが充実していると他の料理を作るときも参考になる。
リブロンにはレシピ本が付属している。加えてホームページでのレシピ案内があるとありがたい。
リブロンという選択肢
「熱伝導の良さと熱保有力の高さをあわせ持つアルミキャスト」
「シンプルな構造と確かな安全性」
「メンテナンスのしやすさ」
「充実したアフターサービス」
私にとって、すばらしい製品だった。
業務用としても実績のあるこの圧力鍋、選択肢の1つとして検討されてはいががだろうか。
ロングセラーには理由がある。
ラインナップ:ガス火用とIH用の2種
ガス火用は3サイズ。
IH用は2サイズ。
ホクアさん、こんなカッコいい製品も出しているのですね!しかもオモリ式!
以上、長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。
なお、この記事の画像について、北陸アルミニウム株式会社様より使用の許可をいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。
誠実なご対応に、一層ファンになりました!